−去勢手術の利点と問題点−

当院で行っている「去勢手術」は犬・猫ともに「精巣摘出術」になります。

全身麻酔をかけた上での開腹手術ですので、リスクと天秤にかけた上でゆっくり検討し、判断して下さい。


○ 精巣が陰嚢内に2つない場合は絶対に去勢して下さい。
特にお腹の中にある場合(腹腔内陰睾、停留精巣)は癌になりやすいため、去勢手術は予防というより治療に近いものです。精巣の癌は症状が出にくく、症状が出た場合はほぼ手遅れになるため、強くおすすめします。

○ 病気が少なくなり、平均寿命が長くなります。

○ 犬では前立腺肥大がなくなります。
前立腺肥大に伴う排尿・排便困難などが起こりません。また、肥大した前立腺は炎症を起こしやすくなりますが、そのリスクも低減されます。去勢犬で肥大する場合は前立腺癌の可能性があります(稀な病気です)。猫ではもともと前立腺が発達していないのでほとんどトラブルが起こりません。

○ 犬ではお尻の腫瘍(肛門周囲腺腫)やヘルニア(会陰ヘルニア)が少なくなります。

○ 犬にとっての「ストレス(?)」と人間にとっての「飼いやすさ」
あっちこっちにおしっこをかけて歩くこと(マーキング)が少なくなります。また、大人の雄犬に見られやすい攻撃性が少なくなります。

○ 猫にとっての「ストレス(?)」と人間にとっての「飼いやすさ」
お尻を上げておしっこを撒き散らすこと(マーキング)が少なくなるか、なくなります。マーキングの臭い匂いもだいぶ軽減されます。近所の雌猫が発情すると殺気立って喧嘩するといったトラブルもほぼなくなります(外に行く子だと喧嘩に巻き込まれますが・・・)。

××××××××× 以下マイナス要因です ×××××××××

● 健康体にメスを入れることに対する抵抗感
これは正確には「リスク」ではありませんが、悩むべき点です。人間にとって利点が多いのは間違いありませんが・・・

● 全身麻酔のリスク (健康であれば稀/ご高齢、持病などでリスク上昇)
健康な子(普通の検査で健康に見える子)に対して麻酔薬を使った場合、1万頭に1頭程度、麻酔薬に対するアレルギーや特異体質によってトラブルが起こると言われています。できる限りリスクを下げるために麻酔のモニター(心電図、呼吸、酸素飽和度など)を行っていますが、99.9%は100%とは違います。

ただし、もし年齢が上がって精巣関連の病気になれば、ハイリスクな状態で麻酔をかけなければならないことになります。

● 肥満(多い!)
太りやすくなります。予めダイエット用のフードなどに切り替えておくのがオススメです。

● 縫合糸に対する過敏症(まれなリスク)
特にミニチュアダックスに見られますが、止血などに用いた糸に対するアレルギー反応を起こすことがあります。以前は一般的によく使われていた絹糸(当院では使っておりません)で多発したようですが、どの成分の糸でも起こりうるものです。

多くはステロイドなど一過性の免疫抑制で治りますが、一部には糸を取り除いてもアレルギー反応だけ残ってしまうことも報告されており、難治性になることもあります。